悪口団
カスの諸君こんにちは。我々は悪口団だ。
我々の活動は、君たちに悪口を浴びせることだ。日夜、世にはびこるクソ野郎を探し出し、直に、またはネット上で、あるいは折込チラシで汚い言葉を投げつけている。
クソ野郎と言ったが、クソアマも当然含まれている。対象は全人類だ。 蔑まれるべき者に貴賤はない。蔑まれるべき行為にも貴賤はない。我々悪口団の前では、人はみな平等である。等しくゴミである。
路上にタバコをポイ捨てする人間はドブ以下である。そもそも歩きタバコがゲロカスの所業である。見つけ次第、百叩きである。物理的にではない、言葉の百叩きだ。行為そのものに対してはもちろん、その者の容姿や服のセンス、学歴・職歴、育ちなども容赦なくなじる。
ポイ捨てを目撃したのにも関わらずそれを見過ごす者も、またブタである。良くない行為だと分かっていながら何の行動も起こせない人間は人間に非ず。己の考えが正しいと確信しているのであれば、相手がどんな見た目をしていても、それを貫くべきである。人によって己の行動を決めることほど愚かなことはない。
勢いまかせにポイ捨てを正しに行く者も、それはそれでタコである。悪行への脊髄反射は、己の価値観が世間を基準としてしか成り立っていないということを、自ら暴露しているのと同義である。また、概して怒りには怒りが返ってくる。すでにタバコの火種は消えているのに新たに争いの火種を生む行為は、時にはポイ捨てよりも重罪である。
お察しのとおり、我々の目的はリンチではなく、住み良い社会のための粛清だ。
我々の活動には賃金が発生しない。悪口団は、世を憂う有志によって結成された非営利団体である。
この活動の発起人――つまり我々の団長は、誰よりもこの世を憂いている。この眉目秀麗かつ頭脳明晰なナイスガイは、幼少期から人類の愚鈍さに気づいておられ、ただでさえ明晰な頭脳をフルに回転させ、この世の様々な事象を把握し尽くし、独自に社会構造を解析され、ほとんど世の真理ともいうべき域に到達された。その時、若干十四である。
何度でも言おう。マジで団長はすごくて、我々がミスとかした時にすごい汚い言葉とか平気で投げつけてきて、いやほんとにすげえ汚いんだよ、あの、まあ俺にもプライドとかあるからここではちょっと言えないんだけど、まあとにかくその時はぶっちゃけマジでヤバイくらいブルーになる。団長マジで死んでくんねえかなって本気で思ったりもする。が、しばらく経つといつの間にかその言葉に背中を押されている自分に気付く。まるで生まれ変わったかのような気持ちになり、あっ間違ってたのは完全に自分の方だったんだ、死ねとか思ってマジで団長ごめんなさい、死んでお詫びします、あ、いやいやこれからの俺の活動をもってお詫びとさせてくださいって心の底から思わせてくれる。これはほんとにマジですごいと思う。超リスペクト。
我々はまだ団長に比べれば未熟だが、精神は一致しているつもりだ。いつか我々も、人の背中を押せるほどの力を持った罵詈雑言を吐けるような、一流の悪口団員になろうと心に決めている。ひいてはそれが、この世のためになると信じて。
人はみな平等である。等しくゴミである。我々悪口団の前では。
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