2019
2019年が終わる。
三つ、大きなことがあった。
一つ。自家用車を買った。ピンクのハスラー。中古ではあるけど状態がよく、きれいでかわいくて気に入っている。
おかげで車に乗る機会が増えた。スーパーに行くのにも、徒歩圏内の店舗ではなく、少し離れたところまでわざわざ出かけたりする。大きな買い物――たとえばちょっとした家具くらいなら車内に積めるので、重い荷物を抱えて電車移動する必要などない。飼い猫も運べる。実家の岐阜にだって高速飛ばせば行ける。深夜に思い立ってドライブすることだってできる。
劇的に生活が一変した。
二つ。テーブルジョーク解散。
4年続いたユニット。演劇ユニットというのか、ラジオ番組というのか、とにかく俳優仲間とやっていた部活動、のようなもの。たとえ少数でも確実に応援してくださる方がいたので、ここまでやってこれたんだと思います。とはいえ、最終的に失望させる結果になってしまい申し訳なく思っています。本当にすみません。
個人的な気持ちを吐露すると、漠然と、「この場で僕は、なにを産み出そうとしているのだろうか」と思っていました。かなり前から。なにかを創って提供し、それを楽しんでもらうというのがまず前提としてあり、でもその上で、テーブルジョークというフィールドが、そもそも自分がじゅうぶんな力を発揮する場として適切かどうか、ずっと疑問でした。
なので、テーブルジョークで僕がやっていたパフォーマンスを見聞きしてくださった人に問います。あなたは、テーブルジョークでの齋藤陽介を楽しんでくれていたでしょうか?どんな方法でもいいので、お聞かせいただけたら幸いです。中にはきっと、今回の解散そのものについて言いたいことがある方もいらっしゃると思うので。僕はすべて受け止めます。
三つ。タイマンの劇場公演。
仲間とともに主宰する演劇ユニット。こちらはれっきとした「演劇ユニット」。団体としては3年ぶりの公演であり、初の劇場公演。演目は、2014年に初演した『かなわない夢ガール』。
タイマンは、旗揚げ当初はわりと精力的に活動していたものの、じょじょに公演頻度が減ってゆき、近ごろは2・3年に一度思い出したように腰を上げる団体になっていた。それはメンバーのスケジュールの問題とか、やりたいことが特にないとか、あるいは単純にめんどくさいとかいろんな要因によるものだが、おそらくこのペースが僕らには合っているんだと思う。
今年の2月ごろにある人からの後押しがあって、このたびの再演の話が持ち上がった。実のところ、はじめは全然やる気がなかった。寝耳に水。『かなわない~』は賛否両論あった作品なので、それをまた立ち上げるのにはかなりのカロリーが必要だなと、それだけでも尻込みするにはじゅうぶんだった。あと、いちばんの理由は、もうそれほど若くないということ。30代半ばになって、初めて、自分の主宰する団体で劇場公演を打つなんていうのは、まあとにかく心身ともに疲れるにちがいない。絶対にそうだ。
なのに返事は「いいよ、やろう。」
二つ返事でOKしたものの、しばらくは悶々と過ごした。
結果やることになって、実際にやって、最終的な感想は、「やってよかった」だ。これはまぎれもない事実。やってよかった。
正直苦しいこともあったけど、観てくださった方々にいろんな感想をいただけたので、それだけでもう、演劇作品を創る意味や意義を実感できた。脚本も務めている身としては、己の頭から出てきた世界が、ほんのちょっとでも世界に影響を及ぼす力を持っているのだと再確認できた。ただ脚本は須貝英が力を貸してくれたので、僕ひとりで書き上げたものではない。だけでなく、初めて外部から呼んだ俳優陣・スタッフ陣、そしてなによりタイマンメンバーである笠井里美と森田祐吏がいなければこの公演自体が成り立たなかった。加えて、並行してやっていたDVD化のためのクラウドファンディングが、ありがたいことに目標額を上回る形で達成された。本当に有り難いことです。
まぎれもなくこの公演は、たくさんの人の力で創り上げたもの。これを痛いほど実感したので、人は人に頼っていい、という当たり前のことを公演を通して思えた。それがいちばんの収穫のような気がする。
あと、自分らこれをやろう!と立ち上がってなにかを産み出すのは大事で、それとは逆に誰かにケツを叩かれてやり始めるのはかっこ悪いものだと思っていたけど、それも意外と悪くないなと思えた。というか、本来の僕はそういう人間なのかもしれない。そういうことも含めての、「やってよかった」だ。
2020年は、よりよいマイペースを見つけられますように。
2019年に僕と関わってくださったすべてのみなさん、ありがとうございました。
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