人が好きなので
友達が増えていくことへの恐怖がある。友達とまではいかなくとも、仕事仲間であったり、親戚であったり、家族の友達であったり、単に知り合い程度のことでもいい、「お互い認識し合っていて、その他のぜんぜん知らない人よりは確実に上の段階にある関係性を持つ人」が増えていくことが怖いと感じることがある。
怖いといっても、うわー!と発狂したくなるほどの恐怖ではない。どちらかというと、ねばっこい冷や汗が断続的に出てくるような気持ちの悪い恐怖だ。僕は人と深く関係を結ぶことがあまり得意ではない。コミュニケーション能力的には可能である。相手のコミュニケーション能力によって関係が結べているケースも多々ある。なのでひとりぼっちではない、ありがたいことに。深く関係を結ぶことが苦手、というよりは、深く関係を結ぶために一歩踏み込むことが苦手、ということかもしれない。
僕の恐怖は、関係を結んだあとに起こるであろう、楽しいことやつらいことを想像することによって引き起こされる。たとえばその新しい友達をすごく好きになってしまうことが怖い。向こうはきっと、僕が好きなのと同じレベルで僕のことを好きにはなってくれない。僕の好きレベルを下回るか、あるいは想像もできないほど上回ってくる。必ず。なぜなら他人だから。他人の気持ちは完全にはコントロールできない。たとえばその友達となにか大きな壁を乗り越えなければならない状況が怖い。乗り越えるためには、その人との絆をより強くしなければならない。なのにその後、もしなにかのきっかけでその人とお別れしなければならなくなったとき、あんなに強く絆を結んでしまった僕らは喧嘩をするか、無視し合うか、あるいは二度と会えない悲しさに打ち震えるかしなければならない。これらには大きな大きなエネルギーを要する。絆が強ければ強いほど、そのエネルギーは大きくなる。それを想像するだけで疲れてしまう。それは妄想でもなんでもなく、今まで生きてきた中でなんどもそういう経験をしてきたからこそ自然に出る発作のようなものだと思う。もう二度とあんな別れ方をしたくない、という別れが幾度かあった。
しかし絆が強くなることは悪いことではない。むしろよいことだ。今のは極端な話である。
別の見方をすると、僕は不器用な人間なので、絆が強くなった人が増えつづけると、ひとりひとりに対する接し方に差が生まれてしまう。多少の誤差があっても、できれば僕は好きな人たちのことは深いレベルで好きでありたい。深い関係でいたい。それが10人や20人になると完全にキャパオーバー。5人でも多いぐらいだ。だから増えることはよくないことなのだ。増えすぎると、どうしたってみんな浅い関係になってしまう。
そんなのは普通のことなのかもしれない。1人親しい友達ができたら、必要に応じて1人切り捨てるぐらいのこともみんなやっているだろう。僕だってそうだ。僕の友達も、僕に対してそういうことをやってきていると思う。それは別にいい。だけどふと、たまらない気持ちになる。人と人が出会うって、やばい。そういう気持ちを心の底の底の小さな引き出しの中に、大事に、でもいつでも取り出せるようにしまっておきながら、最近も新しく人と出会ってしまった。ああどうしよう。
0コメント