秋冬タスク

 寒くなってくると、日常の手数が増える。
 カフェに入る。席につく時に、まずリュックを置く。ジャケットを脱いでその上にかける。暖房がよくきいている場合はパーカーなども脱ぐ。帽子も脱ぐ。今日は雨もようなので、持っている傘をかたわらに置く。僕は席を決めてから注文をするたちなので、ここで初めてリュックから財布を取る。たばこも出してテーブルに置いておく。カウンターで注文をして、財布と、トレーに乗った抹茶ラテを持って席に戻る。財布をしまう。おっと灰皿を忘れた、というので喫煙室の入口まで取りに行く。ズボンのポケットからスマホを出して、着席し、さあくつろぐ準備が完了、いやまだだ。読書をするつもりだった。向かいのいすに置いてしまったリュックの中から文庫本を取り出さねばならない。仕方なく立ち上がり、リュックにかかったジャケットとパーカーをいったん手に持ち、本を奥から引っぱり出し、ジャケットとパーカーを戻し、これにてようやく整いました。
 思うまま過ごしたのち、さて帰ろうかという頃合いになってテーブルの上を見てみると、雑然としている。これがいやだから、結局家にいればよかったんだと思うも後の祭り。また仕方なく立ち上がり、パーカーとジャケットを着、リュックに本とたばこを入れ、リュックを背負い、ポケットにスマホを入れ、帽子をかぶり、テーブルがおおかた片付いたなと認めて、トレーを返却台に戻す。何か忘れてやしないか。ああ傘があった。これでやっと店を出られる。

 このように、寒さは一つ二つの手数を増やす。これが冬になると、ジャケットがコートやダウンなど重くて場所を取るものに変わる。体がしゃんとするから冬が好きとか、街ゆく人々が厚着になっていくのが、冬眠を前にした動物みたいで趣がある、なんてほざいていた20代の自分を口汚くののしってやりたくなるくらい、手数の多い秋冬をうとましく感じる今日この頃。

本とか

主に読書感想文、たまに思ったこと。

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