電子の数字

 Google Payというアプリを入れた。いわゆる電子マネーってやつだ。僕にとっては初めての電子マネー体験。Suicaとか、nanacoとか、いろんなものにお金を入れて使える。ためしにSuicaに1000円をチャージしてみた。これまでずっと、僕はPASMOユーザーをやっている。浮気するみたいで少し気が引けたが、やってみないと何も始まらない。スマホの画面をオンにせずとも、しかるべきところにかざせば改札を通れるらしい。にわかには信じがたい。こわい。しかし世は空前の電子マネー時代である。いかにもずっと電子マネーを使っていますけど、という風をよそおって、しかるべきところにスマホをかざした。驚くほどスムーズに通れた。
 こんな楽なことはないな、と思った。しかしそこにこそ穴はある。オンラインでお金をチャージできるのは確かに便利だが、そのお金はどこから来ているのかというと、クレジットカードを経由した、僕の銀行口座からだ。来月にはまちがいなく請求が来る。自制心がためされているようだ。

 世の中のお金は、このままいくと電子の海の中にしか存在しないようになるのではないか。今でも、さまざまな振り込みは銀行口座から引き落とされる形で完了している。お給料だっていつの間にか入っている。残高がどれくらいなのかはオンラインで確認できる。
貨幣ではなく数字そのものをやりとりしているようだ。
 今やっているスマホゲームの話だが、これは茄子を投げて敵を倒すという横スクロールのもので、貯まったポイントを自分の強化に使うと攻撃力が上がる。もちろん敵の体力も上がる。どれも数字で表され、最初は数千、数万ポイントだが、進むにつれて億、兆、京とインフレしていく。今は、垓あたりを漂っている。そして次のレベルアップに必要な数字の中には、穰や澗、正なんてのが見受けられる。おそろしく大きな数字だ、見たことがない。この大きな数字が、たとえゲームの中のものだとしても、タップひとつでやりとりされていると思うとなかなかのものである。これが現実のお金だったらと考えると……。
 僕は、自分が支払うときはあまりお金を見たくないので、自動引き落としは楽だと思っているが、もらえるお金は、まずはいったん現物を手に取りたいと思う。(こういうのも、現金な奴、っていうのかな。)なんにせよ、ある程度はお金を手で触れるようにしておいたほうがよさそうだ。でないとそのうち、自分自身さえも数字に置き換えられてしまいそうだ。

本とか

主に読書感想文、たまに思ったこと。

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