ネプチューン封神演義コンプレックス

中学生の時、ネプチューンが好きな女の子がいた。お笑いトリオのネプチューンだ。

当時は「ボキャブラ天国」がもう視聴者投稿から若手芸人ネタ番組に移行していた頃で、僕はすでに観るのをやめていた。
芸人さんが嫌いだったわけではなく、なんとなくもう観ていなかっただけだ。その子の発言によって、番組のシフトチェンジを知ったんだっけか。

とにかくその子はネプチューンの、特に原田泰造さんがやるホストのキャラが好きだったらしく、しきりに女友達とその話をしていた。彼女はわりとクールで勉強もできるタイプだったが、ネプチューンの話題になるとやけにテンションが爆上がりし、「かっこいい」「かわいい」を連呼して泰造オタ全開の様相を呈していた。
そんな記憶が、なぜか鮮明にある。


断っておくと、僕は別にその子のことが好きだったわけではない。どちらかと言うと苦手なタイプだった。

何年生の時だったか、彼女と僕は学級委員になった。
ある日、何かの作業を二人でしなくてはいけなくなったのだが、どういうわけか教室ではなく、ナントカ準備室的な狭い小部屋でやることを強いられた。
とても気まずかったので、僕は無理矢理いろんな話をした。

どこで仕入れたか忘れたが、彼女が漫画『封神演義』を読んでいると知っていて、僕もちょうど読んでいたので、そこに登場する楊戩(ようぜん)というイケメンキャラの話題を振ったことをよく覚えている。イケメンの話題なら食いついてくれるだろうという甘い目算によるものだ。
しかし彼女には聞こえていなかったようで、僕はそれとなく別の話題に切り替えた。でも僕はなぜかどうしても楊戩の話がしたかったので、しばらくののち、あたかも初めて話しますよというテンションでまた楊戩の話を出した。
すると彼女は、「その話さっきもしたよね」と言ってのけた。いや聞こえとったんかい!――などとツッコめる雰囲気ではなかった。それにその頃はツッコミのツの字さえよく知らない。僕は「ああ、うん」と答えることしかできなかった。イケメンキャラの話なら食いつくだろうと踏んだ自分の安直さを、中学生ながらはっきりと自覚し、呪った。
まあでもとにかく、彼女は楊戩の話が聞こえていたにも関わらず、華麗にスルーしていたわけだ。そんなことってある?

明確に彼女が苦手だと意識し始めたのはこの時だと思う。
平静を装っていたが、僕の心中は穏やかではなかった。
(好きな芸人の話だったらあんなにキャピキャピ笑って話すのに、二人きりの空間で俺が話すことはそんなにつまらんか。ああつまらないんだろうね。
でももうちょっと愛想とかさあ、ねえ?あってもよくない?二人で学級委員なんだよ?もっと仕事しやすくなる環境づくりした方がよくない?これだからお笑い好きの女子はさぁ……)

これが一番強烈な思い出で、他にも似たようなことがたびたび起こった。
たった一人の話だが、そんなわけで僕の中では「お笑い好き過ぎ女子、一般男性に厳しがち」が、ひとつのあるあるとして確立した。


とは言え、今の僕がお笑いを観るようになったきっかけはここにあるかもしれない。さらに言えば、舞台に上がろうと思ったのもこのあたりが原点の気がしなくもない。そういう意味では彼女には感謝すべきなのだろうか。
あとネプチューンは普通にすげー好きです。

本とか

主に読書感想文、たまに思ったこと。

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