ワンパン
能ある鷹は爪を隠すという。
僕はこれに、ほぼ、同意している。
自分のすごさを誇示しない人はかっこいい。
いや、
努力する姿をいっさい見せないことがかっこいいのかもしれない。すごいものは見たいもん。
突然すごいことをやる、ってのがかっこいいんだよ。そんなことされた日にゃあ、もう無理よ。なんも言えん。脱帽。白旗。
やっぱし、「私は今こんなにがんばってます!」ってフリがあるよりも、急に眼前に神技つきつけられた方がやーばいもん。
だから“爪”っていうのは能力のことじゃなくて、陰の努力のことだと僕は捉えている。
ということで、僕も基本的には“爪”を隠していたい。できあがったすんげぇものしか提供したくない。
んだけど。
“爪”の部分見るのもわりと好きなんだよね。
たとえばアイドルのダンスレッスンとか、ボーカルレコーディングとか。彼女らの成長していく過程を見るのが楽しいんすよ。
たぶん人それぞれいろんな対象でこれはあると思う。
役者の稽古風景を見たいとか、ミュージシャンが曲作ってる段階を知りたいとか、漫画のネームを読んでみたいとか。
いろいろあるけど、なんか「途中」が見たいんだろうね。
っていうのと、汗かいたり失敗したりする姿を見て、「あ、この人も自分と同じ“人間”なんだな」って実感したいってのもあると思う。
で、そこから完成披露までの、なんだろう…伸び率?みたいなものを追いたい。伸び率が高いほど感動できるしね。
じゃ、ありとあらゆる創作物をショービジネスとしてひとまとめにした時、創作過程や練習風景=“爪”を見せるのは、わりと得策…なのか……?
宣伝方法のひとつとしてはかなり昔から取り入れられてきてるから、まあそういうことなんだろう。「メイキング」なんて言葉もあるしね。(まあそれは後出しのことが多いけど)
SNSが発達した現代においては、いちばんお手軽な方法。みんなバンバン“爪”見せてる。
そもそも存在を知ってもらうために見せる人だっている。
けど、
“爪”でフリを利かせたにもかかわらず、結果あんまりよくないものができちゃったとして。
それを見て「ざまあ」って思う…みたいな楽しみ方をする人も中にはいる。イジワルよね。
まあイジワルなんだけど、確実にいる。人間ってそういうもん。ネット社会だとそっちのが目につきやすい。
でも人前に何かを晒すっていうのはそういうこととも向き合わなきゃなので、やっぱ作り手には覚悟が必要よね。
だったら“爪”は隠しておいた方がいいのかもしれん。とにかく沈黙を通していきなりすげぇもん見せたら、大衆なんて一発よ。
爪無し一発、まさにワンパン。僕はワンパンマンでありたい。
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