怪我の功名(ズボラ)

 長財布を使っているのだけど、小銭を入れる部分の布が裂けている。もう長いこと裂けたまま放置している。

 原因を探ってみた。この部分には、小銭以外にも入れるものがあとふたつある。ひとつは結婚指輪。指輪を外すのは芝居の稽古や本番中だが、そのあいだはほとんど財布にさわらないので、指輪がこすれて布が傷つくということは考えられない。もうひとつは自転車の鍵。あ、これか。ぜったいこれだな。自転車の鍵はギザギザしているし、おまけにキーリングと、やわらかい素材だけどわりと存在感のあるキーホルダーと、そして小さな鈴がついている。しかもこれを財布に入れているあいだは、財布をリュックに入れた状態で歩いたり、そこから取り出してお金を払ったりしている。なのでこすれまくっている。これだ、間違いない。

 原因がわかったので以降は使い方に気をつけるしかないが、もう裂けてしまっているものは取り返しがつかない。いや、修復すればいいだけの話だ。数年前、誕生日プレゼントとして妻に買ってもらった財布だ。ポールスミスのかっこいいやつなのだ。大事にちがいないのだから、縫うなりすればいい。ただ縫うとなると、中の小銭やその隣の部屋に入れてあるお札やレシートやポイントカードの類をいったん取り出してやらなければならない。そうするときっと裁縫しやすい。でもなぁ。これはめんどうだぞ。出すのはもちろんだが、出したものをまた同じところに同じ並びで入れ直さなければならないのがいっそうめんどうだ。厳密には同じ並びに戻す必要はないかもしれないが、なんだかそうしなければならない気がするし、それができないのであればわざわざやることはないとすら思う。あれ、ぜんぜん大事にしてないな。えっとじゃあ応急処置として安全ピンでも刺しておくか。いやだめだ。大きさや形状的に、自転車の鍵と似たようなものだ。こすれるはずだ。それに、針がよけいに布を裂くおそれもある。手詰まりだ。このまま使うしかない。

 しかしこれは考え方しだいだ。この部分が裂けていると、小銭が飛び出して、隣の部屋のポイントカードに埋もれていることが多い。で、これ、すぐには気がつかない。何回かに一度の会計のときにチラッと顔を出す程度なのだ。じっさいに、さっきも会計中に100円玉がふたつも現れた。なんだかラッキーだった。単純に財布の損壊によるものだとはわかっている。所持金が増えたわけでもない。それでも、無自覚の貯金のようだ。こう考えると、人生が少し楽しくなる。まあ直すに越したことはないけど。

本とか

主に読書感想文、たまに思ったこと。

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