輪廻る

 繁華街の外れにあるラブホテル。亜子がリネン室でもそもそと作業をしている。そこへ麻由がカートを押して入ってきた。 

 「当てようか」と亜子。麻由はニヤリと笑ってうなずく。


 亜子は回収されたばかりのシーツを一枚取り、じっと見つめる。くんくんと匂いを嗅ぎ、そうしてしばらく考えたのちにこうまくし立てた。


 「男は30代後半。角の焼肉屋でしこたま食って呑んできたね。しかもホルモン系しか頼んでないよこいつ。体は全然鍛えてないだろうな。まあ太ってるわけじゃないけど、頭の方はだいぶ来てるみたいだからそろそろ気を付けた方がいいね。女はあの子、金髪のギャル。今日はやけに香水がきついから仕事の後デートでもすんのかしら。あんまり汚れてないし男の方は下手だったんだろうね。この様子じゃ30分ももってないんじゃないの?」 


 麻由は「お見事」と拍手した。「しかも…」と続けようとしたのを亜子が遮り、「この組み合わせって二ヶ月ぐらい前に一回来てない?」と言ってのけた。「さっすが~」と言いながら、麻由はシーツを受け取った。

 「でも亜子さんが休みの時にも一回来てるから、もう三回目の指名かも」 

 「彼女もご苦労さんだね」

 「私だったら絶対いやだわあんな男」

 「きつい?」

 「きついきつい、吐く」

 「あの子は吐かずにやってくれるから助かるわ」

 「ねー」


 二人はそんなやりとりをしながら、それぞれの仕事を続けた。




 ◆◆◆◆




 スラム街の中心にあるラブホテル。布紗子がリネン室でのろのろと作業をしている。そこへ織江がカーゴを押して入ってきた。

 「当てたろか」と布紗子。織江はヘニャリと笑ってうなずく。 


 布紗子は回収されたばかりの枕カバーを一枚取り、ぴしっと見つめる。すんすんと匂いを嗅ぎ、そうしてしばらく考えたのちに息つく暇なくこうまくし立てた。


 「男は還暦間近。駅向こうのバーで浴びるほど呑んできてんな。でもつまみはミックスナッツしか頼んでへんわ。年齢の割には鍛えてるみたいやね。まあ言うてもジジイやから、いくらお盛んでも頭の方はつるっぱげやな。女はあの子、清楚風の黒髪色白。今日はやけに気合い入った下着つけてるみたいやから愛人のとこにでも行くんやろね。でもけっこう汚れてるし、おじいちゃん相当がんばったんやな。延長したやろ?」


 織江は「なんで分かるん?」と乾いた拍手を送った。「ただな…」と続けようとしたのを布紗子が遮り、「この組み合わせって一年ぐらい前に一回来てるよな」と言ってのけた。「あんたバケモンやな」と言いながら、織江は枕カバーを受け取った。

 「でも布紗ちゃんが休みの時にも一回来てるから、相当お気に入りなんやろね」 

 「ようやるわあの子も」

 「ウチやったらジジイはNG出すわ」

 「ゲボい?」

 「ゲボいゲボい、手首切る」

 「あの子は血ぃ出さずにやってくれるから助かるわぁ」

 「ほんまほんま」


 二人はそんなやりとりをしながら、それぞれの仕事を続けた。




 ◆◆◆◆




 721階建て桃色城の69階にある甘室。縫(フェン)がリネン室でざりざりと作業をしている。そこへ白(パイ)がつづらを押して入ってきた。 

 「我当」と縫。白はチュルリと笑ってうなずく。


 縫は回収されたばかりの糸を一本受け取り、るんと見つめる。ふごふごと匂いを嗅ぎ、そうしてしばらく考えたのちに親の敵のようにこうまくし立てた。


 「男齢九九九。空中円卓鳥鍋食肝酒呑。骨完食。筋力百倍剤常用。来年齢千、頭頂部伸如仙人。女、常連妖狐。本日纏薄羽衣銀狼宴用。糸焦、男淫術大技使用。現在尚交戦中」


 白は「凄」と小躍りした。「補足…」と続けようとしたのを縫が遮り、「此組手、約五十年前一度来店」と言ってのけた。「妖術」と言いながら、白は糸を受け取った。

 「縫休時一度来店、二人好敵手」

 「強妖狐」

 「我仙人封印」

 「嫌悪?」

 「嫌悪嫌悪、体液大量噴出」

 「妖狐不噴出優良女」

 「賛」


  二人はそんなやりとりをしながら、それぞれの仕事を続けた。 




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本とか

主に読書感想文、たまに思ったこと。

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